第2版のまえがきから
この本の大部分は新しく書き直したものである.わたくしは表現の方法を注意深く調べた上で,どちらかといえば抽象的でない形で理論を進め,しかも表現の正確さや理論を進める際の論理的な性質を少しもそこなうまいと試みた.これによって當然この本は一そう廣い範圍の讀者に適するようになったと思う.もっとも,抽象そのものが好きな讀者には第1版の型の方が好ましいかもしれない.
變更を行なったおもな點は,3 次元的な非相對論的な意味で’狀態’ということばを用いたことである.おもに非相對論的な槪念をもととして理論を作り上げるのは,一見して殘念なことのように思えるかもしれない.しかしながら, ’狀態’を非相對論的な意味で使うということは,はっきりした說明をする上できわめてたいせつな役をするのであって,それを見ると,現在の量子力學の基本的な考えは,まさにこの點で大きな修正を必要とするのではないかとさえ思われる.そして,理論を改良すれば,‘狀態’を始めから終りまで相對論的な意味に使ってゆこうとする進め方よりも,ここで示したような進め方の方に一そう近いものになるのではないかと思われる.
| THE INSTITUTE FOR ADVANCED STUDY, PRINCETON |
| 1934 年 11 月 27 日 |
| P.A.M.D. |